【有馬温泉月光園便り】日本発のサイダー
【有馬温泉月光園便り】日本発のサイダー”有馬サイダーてっぽう水”
温泉と炭酸せんべいで有名な有馬温泉ですが、実は有馬温泉は日本のサイダーの発祥の地とも言われております。
日本で言うサイダーというのは、日本独特のもので、本来の意味はリンゴの果汁を発酵して作られた酒で、6%前後のアルコールを含む物をいうそうです。
有馬には昔は人が立ち入らなかった場所がございます。町の南側に位置する射場山と愛宕山の谷あいに位置する位置する通称”地獄谷”と呼ばれる場所で、射場山断層の割れ目から炭酸ガスが噴出し、その影響で岩石が白くなり、洞穴にはプクプクと奇怪な音を立てたお湯が沸いていたようです。その洞穴に鳥や虫が入ると、二酸化炭素中毒を起こして死んでしまうことから、有馬の住人はその場所を”鳥地獄””虫地獄”と呼び、そこに沸いている湯を”毒水”と称して、恐れていたそうです。
明治6年に内務省司薬場の検査により、この毒水が良質の二酸化炭素冷鉱泉だということが分かりました。
有馬温泉には赤湯と呼ばれる含鉄強食塩泉があり、これを金泉と呼んでおります。一方、毒水が二酸化炭素冷鉱泉で通称銀泉と呼ばれるものです。この銀泉が見つかったことにより温泉ばかりでなく、土産物まで使われることになりました。
この銀泉を使ったお土産で一番有名なものが”炭酸せんべい”ですが、同時期に、炭酸泉を使って日本初のサイダーが有馬で生まれました。そもそもサイダーは外国からの飲料ですが、これを模して日本オリジナルのサイダーが有馬の地で造られたのです。
明治34年、居駒吉らが発起人となって「有馬鉱泉株式会社」が設立され、ガス入りのミネラルウォーターを外国へと輸出しておりました。炭酸泉源の傍に瓶詰工場を造り、温泉を使って「炭酸鉄砲水」なる清涼飲料水を製造していました。その数年間2000〜3000箱と言われております。
市場の評判も良かったこの会社が国内向けに生産した期待の新製品が”有馬サイダー”です。「有馬鉱泉」で造られていたガス入りのミネラルウォーターに香料や甘味を加えると美味しい飲料となります。これをサイダーとして発売したのです。この有馬サイダーの発売につづいて各地で近代産業の象徴としてサイダーが作られます。「帝国鉱泉」はサイダーの元を輸入して三ツ矢印の「平野シャンペンサイダー」を造り、これが現在の三ツ矢サイダーのルーツだそうです。続いて「シトロン」というレモン系の炭酸飲料まで登場し、爆発的にヒットしたようです。
このような動きから、1944年には他の鉱泉会社に対抗しようと、機械を購入し、大量生産を目指します。大正2年には大砲のデザインが入った角型のサイダーを発売。以後も多くの種類のサイダーを発売しています。しかし時代の流れには勝てないようで、大正13年に「金泉飲料」に買収され、翌年には「日本麦酒鉱泉」に再度買収され、川西市の平野に工場が移され、有馬でのサイダー製造が終わってしまったそうです。
2002年秋にこの有馬サイダーが復活しました。昔ながらの味を出すために飲むと思わずゲップが出るくらい炭酸をきつくしてあります。そして昔のイメージを残す為「有馬八助商店」という合資会社を設立し、昔のトレードマークであった鉄砲を模したラベルを起用し、「有馬サイダーてっぽう水」として有馬町内で販売したのです。全国から40年前の古いビンを取り寄せてラベルを貼っておりますので、レトロ感があふれたサイダーとなり、瞬く間に有馬の名物となりました。
この有馬サイダーは月光園游月山荘、鴻朧館両館の売店で販売しております。お値段は1本250円となっております。有馬温泉にお越しの際には炭酸せんべいを合わせて是非お試しくださいませ。
平成19年5月20日 有馬温泉月光園 門口
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